与信管理において取引信用保険を活用している企業は多い。
取引信用保険の「デメリット」としてよく聞かれるのは契約期間中に、保険会社から当初の与信枠(与信限度額)の減額又は撤回(取消)がなされる可能性があることだ。
しかし、捉え方によっては、保険会社側からの減額・撤回通知は、「デメリット」どころか「メリット」となり得る。
それは、減額・撤回通知は、与信審査に精通した保険会社の審査パーソンによる「アラート」だからだ。
与信管理の目的は狭義には「債権回収」だがより広くは「経営資源」の管理だ。
プロの審査パーソンが、与信枠の維持が難しいと判断した企業に対し、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・時間・モチベーション等)をそれ以上、投入していくべきか?
それを再考するきっかけを与えてくれる。
外部の審査機能を活用することによって、自社の経営資源の配分を随時見直すことができるのだ。
保険会社によっては「契約期間中」の与信枠の減額・撤回をしない形の契約を結ぶことがあるようだ。
注意しなければならないのは、その契約期間中は与信枠は維持できても、次回に現状の与信枠での「更新」はしないということだ。
逆に契約期間満了まで与信枠に関するアラートが遅れる。これは、むしろデメリットであろう。
要するに取引信用保険をどのように活用するかによるのだろう。
言葉は悪いが、「毒まんじゅう」を食べてもらうのか、一緒に与信管理を行うパートナーと見るのか。
後者が正しいと思われる。
自らもよく与信先を注視することに加え、社外機能としてプロの審査パーソンを起用し、そのプロも見抜けなかった与信リスク、つまり保険会社が与信枠を維持していた取引先の突発的な倒産に対し、補償を行う。
これが本来の信用保険の姿だと思われる。
無論それには、信用保険会社側に十分な審査力・目利力があることを前提とする。
従って、取引信用保険の選び方としては、信用保険会社の審査体制(マンパワーや審査担当のバックグラウンド等)を確認してみるのが重要であると思われる。
とはいえ、契約直後に与信枠の「減額」「取消」を通知されれば、それは頭にくるだろう。しかし、それは契約スキームの問題というよりも、当初の保険引き受け時に、付保対象企業の少なくとも6カ月程度の信用状況を見抜けなかった審査パーソンの「腕」の問題だろう。
だからこそ、信用保険会社を選ぶ際には審査パーソンの実力や審査体制を確かめるのが肝要であると思われる。
H.Izumi