2021年10月4日 H.Izumi
OFACの制裁リストやデータベースに対して検索をかける場合、ゆらぎ(誤記や変名)に対応しなければならない。
ゆらぎに対応するとは、例えば、取引の申込者(=チェック対象)が住所を記入する際に、キューバをCubaではなくKubaと書いたり、スーダンをSudanではなくSoudanと誤記したとしても、それらが制裁対象国(Cuba・Sudan)からの申し込みであると検知できるようにするということだ。
申込情報から制裁リスト等のデータベースに自動的に照会をかけるスクリーニング・システムを組んでチェックをする場合、この機能を備えていないとコンプライアンス違反を問われかねない。
その例が世界的通販会社A社だ。A社は制裁対象国の顧客と取引したことにより米当局(財務省)に民事制裁金を支払うに至ったのだが、同社のスクリーニング・プロセスでは、Krimeaをクリミア(Crimea)として検知しないようなシステムで運用したことでリスクを見逃した。
米当局はこうした「ゆらぎ」に対応しない硬直的なシステムでの運用は制裁コンプライアンスに違反するとした。
日本における反社チェック(マネロン対策・経済安全保障対策チェック)業務への示唆としては、例えば齋藤の「齋」を、「斉」と(敢えて)記入するような申込者もいるだろうから、こうした漢字表記の「ゆらぎ」も想定したシステムでないと「自動化」するのは危険だということだ。
丁寧な手動での反社チェック(審査)を実践されている場合は、ゆらぎの生じやすい漢字には個別に注意を払っている方が多いと思われるが、形式的・惰性的にデータベースの照合を済ますことがチェックだと錯覚している危険な企業は、今一度プロセスを見直した方がいいだろう。
米当局はチェックのプロセスで民事制裁金の多寡を評価するのだから、脆弱なチェックを合理的・先進的と勘違いしているような企業は気を付けた方がいいと思われる。「根本的にわかっていない」として制裁金が加重されかねない。
杜撰なチェックで安全保障に脅威を与えかねないとステークホルダーに非難されないためにも面倒だがきちんとしたプロセスを踏むことが重要だ。