実質的支配者に関する議論は日本では盛り上がりに欠けるように思われる。信用調査や反社チェックにおいて使えない(有用でない)データだから議論しても意味がないと考えられているからだろうか。筆者も実質的支配者のデータは民間の信用調査・反社チェックの場面でそれほど有用ではないと考える「否定派」である。
しかし、欧米でPSC(Persons with Significant Control)、UBO(Ultimate Beneficial Owner)、BO(Beneficial Owner)など仰々しい名称が冠せられるこの概念(制度)は、単にマネー・ロンダリング対策(AML)やテロ対策(CFT)の範疇に留まらず、経済的自由と責任(自由の見返りとしてのディスクロージャー制度)の議論、プライバシー(本来秘密であるはずの私的財産の状況が暴露される根拠は何か)の問題、当局間の情報共有の問題(行政学)、制度による犯罪の抑止効果と誘発といった刑事学や経済学上の問題、各国でどこまで真面目に取り組み情報を共有するかなど国際政治上の問題、等々、学際的な議論ができるエキサイティングな分野である。
もとより一介の信用調査パーソンに過ぎない筆者がこのような多角的な議論を独りでできるはずもないが、まずは情報整理と下地づくりから始めることにしたい。 アクティブ株式会社 泉博伸
◆実質的支配者リンク集(公的機関)
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なお、2022年11月22日にEU Court of Justiceがbeneficial ownershipの一般公開について判決を下しています。
■イギリス → Companies House
■デンマーク → CVR
■ドイツ → Transparency Register
■フランス → infogrefee
■オランダ → KVK UBO-register
■スペイン → Registradores
■スウェーデン → Companies Registration Office
■アイスランド → Skatturinn
■オーストリア → WiEReG
■エストニア → e-Business Register